知的財産管理技能検定(知財検定)2級(管理業務)第39回学科・実技試験の解答及び解説

こんばんは、お久しぶりです。

先日公開された第39回試験の解説記事をアップします。

問題文は以下の公式サイトからダウンロードしてください。

http://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_kakomon.html

 

* * *

 

■学科

 

まずは学科から。

 

【問1】

正答は(ア)。

著作者の「権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない」(ベルヌ条約5条(2))。

ベルヌ条約は、「無方式主義」及び「『内国民待遇』の原則」を採用しています。

 

【問2】

正答は(エ)。

「品種登録は、品種登録出願に係る品種(以下「出願品種」という。)の名称が次の各号のいずれかに該当する場合には、受けることができない。¶一 一の出願品種につき一でないとき」(種苗法4条1項1号)。

 

【問3】

正答は(イ)。

著作権について「質権」を設定することができます(著作権法66条1項参照)。

 

【問4】

正答は(イ)。

弁理士又は特許業務法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、…『国際出願』…に関する特許庁における手続…についての代理(特許料の納付手続についての代理、特許原簿への登録の申請手続についての代理その他の政令で定めるものを除く。)…を業とすることができない」(弁理士法75条)。

 

【問5】

正答は(ア)。

特許協力条約(PCT)の目的の1つとして、国ごとに異なる出願「方式」を統一することにより、出願人及び各国特許庁の負担を軽減することが挙げられます。

 

【問6】

正答は(ウ)。

「レコード製作者」とは、「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」(著作権法2条1項6号)。

著作隣接権」は、知財検定2級でも弁理士試験でも非常に出題率が高いので、マスターすれば著作権法を得点源にすることができますよ♪

 

【問7】

正答は(イ)。

要注意の枝は(エ)。

特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したときは、『特許掲載公報の発行をしたものを除き』、その特許出願について出願公開をしなければならない。特許法64条の2第1項に規定する出願公開の請求があったときも、同様とする」(特許法64条1項)。

 

【問8】

正答は(エ)。

特許権者…は、自己の特許権…を侵害すると認める貨物に関し、政令で定めるところにより、いずれかの税関長に対し、その侵害の事実を疎明するために必要な証拠を提出し、当該貨物がこの章に定めるところに従い輸入されようとする場合は当該貨物について当該税関長…が認定手続を執るべきことを申し立てることができる」(関税法69条の13)。

関税法」は弁理士試験の出題範囲外なのですが、「パリ条約」や「TRIPS協定」の問題では関税法の知識が意外と役立つ…というのが私の個人的経験です。

 

【問9】

正答は(ウ)。

「編集著作物」の要件は、「素材の『選択又は配列』」に創作性があることであり(著作権法12条1項)、当該素材が著作物であることは要件とされていません。つまり、素材は「著作物」でも「非著作物」でもどっちでもOK。

 

【問10】

正答は(イ)。

「発明者」となれるのは「自然人」だけです。特許法上の根拠の1つとしては、願書の記載事項に関する特許法36条1項2号の文言が、発明者の氏名又は名称ではなく「発明者の氏名」となっていることが挙げられます(会社等の「法人」が発明者になれるとすれば「発明者の氏名又は名称」という文言になっているはず)。

要注意の枝は(ア)。

たとえば、「開発部」に所属していた従業員が「営業部」に異動した後に行った発明であっても、特許法35条1項の「『過去の職務』に属する発明」に該当し得ます。

 

【問11】

正答は(エ)。

「産業上利用することができる発明をした者は、『次に掲げる発明を除き』、その発明について特許を受けることができる。¶三 特許出願『前』に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は『電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明』」(特許法29条1項3号)。

 

【問12】

正答は(ア)。

「著作者は、その著作物…をその複製物…の『貸与』により公衆に提供する権利を専有する」(著作権法26条の3)。上記「貸与」には「無償貸与」も含まれると解されています。

要注意の枝は(イ)。

「著作者は、その著作物を公に『上映』する権利を専有する」(著作権法22条の2)。

「上映」とは、「著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴って映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする」(著作権法2条1項17号)。

公衆送信権」は情報通信技術の発展に伴い後付けで追加された権利なので、既存の支分権との重複適用を避けるための「かっこ書」「ただし書」等が著作権法のいたるところに存在します。これらは出題者にとってはネタの宝庫であり、また、社会のデジタル化・ネットワーク化という観点からも、「公衆送信権」関連問題は今後も頻出テーマであり続けると予想されます。

 

【問13】

正答は(ウ)。

「ランニングロイヤルティ」は、ライセンス製品の販売数量や売上高等に応じて支払われる実施料(使用料)のことです。

これは新作問題ですが良問ですね。直近の傾向として新作問題の比率がやや高めになっていますので、最新版の公式テキストできっちり押さえておいてください。

 

【問14】

正答は(イ)。

「FI」や「Fターム」は日本の特許庁が独自に作ったツールですので、「世界共通」ではありません。

枝(ア)(ウ)(エ)はcorrectなのでそのまま覚えちゃいましょう。

 

【問15】

正答は(ア)。

著作権法21条(複製権)又は著作権法23条1項(公衆送信権)に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権等保有者」という。)は、その著作物について…「出版行為」…又は…「公衆送信行為」…を引き受ける者に対し、出版権を設定することができる」(著作権法79条1項)。

「出版権」自体は出題頻度低めなのですが、最低限、「『出版権』を設定できる主体は『複製権等保有者』である」ということだけは押さえておいてください。

要注意の枝は(ウ)。

「第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録がされている著作物については、これらの登録に係る年月日において最初の発行又は最初の公表があったものと推定する」(著作権法76条2項)。

なお、プログラム著作物の「創作年月日の登録」に関する著作権法76条の2についても、今後の出題が予想されますので、条文に目を通しておいてください。

 

【問16】

正答は(ア)。

これは良問なので、根拠条文を全て挙げておきますね。

「他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があったものと推定する」(特許法103条)。

「この法律で発明について『実施』とは、次に掲げる行為をいう。¶一 物…の発明にあっては、その物の生産、『使用』、譲渡等…、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出…をする行為」(特許法2条3項1号)。なお、「特許発明の技術的範囲」(特許法70条1項)とは、要するに特許権の「権利範囲」のことです。

「次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。¶三 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての『譲渡等又は輸出のために所持』する行為」(特許法101条3号)。

「故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる」(特許法106条)。

 

【問17】

正答は(エ)。

知財検定2級では近年意匠法の出題が少ないのですが、これは良問ですね。解答の根拠条文は以下のとおりです。

「この法律で『意匠』とは、物品…の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物…の形状等又は画像…であって、『視覚を通じて美感を起こさせるもの』をいう」(意匠法2条1項)。

「次に掲げる意匠については、意匠法3条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。¶二 『他人の業務に係る物品…と混同を生ずるおそれがある意匠』」(意匠法5条2号)。

「次に掲げる意匠については、意匠法3条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。¶三 物品の機能を確保するために不可欠な形状…『のみ』からなる意匠」(意匠法5条3号)。

枝(ウ)については、「意匠登録を受けられる可能性が低い」という結論だけでなく、その理由が2通りあり得るということにも注意してください。すなわち、本枝において審査対象となっている意匠登録出願が、(1)類似の意匠が掲載された意匠公報の発行「後」に行われたものであれば、意匠法3条1項3号(公知意匠に類似する意匠)に該当することを理由に拒絶されます。一方、(2)上記の意匠公報の発行「前」であれば、意匠法9条1項(先願主義)違反で拒絶される場合があります。

 

【問18】

正答は(エ)。

「各国際出願は、『国際調査』の対象とする」(PCT15条(1))。

「国際出願は、『出願人の国際予備審査の請求により』、この条及び次の諸条並びに規則の定めるところにより『国際予備審査』の対象とする」(PCT31条(1))。

要注意の枝は(イ)。この枝問題文はミスリーディングで好きじゃないなぁ。

たしかに、「国際調査見解書」(国際調査機関の書面による見解)は、国際公開と同時に「WIPOのウェブサイトに掲載される」のですが、「国際公開の対象」に含まれるわけではないので注意してください(PCT規則48.2)。

 

【問19】

正答は(ウ)。これはパテントプールではなく、「クロスライセンス」の定義ですね。

要注意の枝は(エ)。

これは新作問題だと思いますが、「価格協定」が「カルテル」に該当するというのは常識ですよね。

なお、独占禁止法が禁止する行為は「私的独占」「不当な取引制限」「不公正な取引方法」の3つに分類されますが、「カルテル」は「不当な取引制限」に該当するということも覚えておいてください。

 

【問20】

正答は(イ)。

意匠権の存続期間満了後であっても、当該意匠が「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)に該当する場合は、不正競争防止法による保護を受けられる場合があります。

要注意の枝は(エ)。

本枝の問題文前半はcorrectですが、客観的事実に反する比較広告は営業誹謗行為(不正競争防止法2条1項21号)に該当し得るので、後半はincorrectです。

弁理士試験(短答)では全60問中5問が「不正競争防止法」です。最も得点しやすい法分野なので「やって損はない」ですし、知的財産法の中でもユーティリティプレイヤー的役割をこなす興味深い法律だと思います。

 

【問21】

正答は(イ)。

「商標権の存続期間は、『商標権者』の更新登録の申請により更新することができる」(商標法19条2項)。

「更新登録申請」ができるのは「商標権者」だけです。これめっちゃ大事なのでそのまま暗記しちゃってください。

要注意の枝は(ウ)。

商標権の存続期間の更新登録手続は、かつては、実体審査ありの更新登録「出願」だったのですが、現行法では、実体審査なしの更新登録「申請」になっています。

 

【問22】

正答は(エ)。

「適法引用」(著作権法32条)の要件として、非営利・無報酬であることは要求されていません。

要注意の枝は(イ)。

著作物の利用許諾契約は「諾成・不要式」の契約ですから、契約書は契約の要件ではなく「証拠」という位置付けです。

 

【問23】

正答は(ア)。

「拒絶査定不服審判で争点になり得る」ということは、言い換えれば、「拒絶理由に該当する」ということです。

特許法上、「拒絶理由」は特許法49条に「限定列挙」されていますので、特許法49条に規定されていない事項は拒絶査定不服審判の争点になり得ません。

以上の前提を踏まえて本問の各枝を検討すると…枝(イ)(エ)は特許法49条4号、枝(ウ)は特許法49条2号の拒絶理由に該当します。他方、枝(ア)は特許法49条各号のいずれにも該当しないので、拒絶査定不服審判の争点になり得ません。

 

【問24】

正答は(ア)。

「次に掲げる者は、著作権法21条の複製を行ったものとみなす。¶一 著作権法30条1項…に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物…を頒布し、又は当該複製物によって当該著作物の公衆への提示(送信可能化を含む。以下同じ。)を行った者」(著作権法49条1項1号)。

枝(イ)はcorrectなのでそのまま覚えちゃいましょう。根拠条文は著作権法47条の6第1項1号です。

枝(ウ)の根拠条文は著作権法30条の2第1項。「複製伝達行為」を行うに当たっては、一定の要件の下で「付随対象著作物」を利用することができます。

枝(エ)の根拠条文は著作権法119条3項2号。「違法ダウンロード」に対する「刑事罰」は、以前は「映像と音楽」に限定されていたのですが、改正著作権法により「言語の著作物」も対象に含まれることになりました。怖いですね~(by淀川長治)。

弁理士試験に比べて知財検定著作権法改正への反応が早いですね。問24は弁理士試験受験者もかなり苦戦すると思います。

 

【問25】

正答は(ウ)。

詳しくは、特許庁の下記webページを参照してください。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/johotekyo/jyouhou_01.html

枝(イ)(エ)はcorrectなので、セットで覚えちゃいましょう。

 

【問26】

正答は(ウ)。

既に消滅した特許権の譲渡契約は「実現不可能」なので「無効」になります。

 

【問27】

正答は(ウ)。

要注意の枝は(イ)。

登録商標と同一又は類似の名称は、原則、地理的表示としての登録を受けることができませんが、「登録商標に係る商標権者たる生産者団体」による登録申請等、一定の例外が認められています(地理的表示法13条2項)。

 

【問28】

正答は(エ)。

「IPランドスケープ」の定義ですね。お偉いさんが総合的な意思決定を行う際の判断材料を提供するための手法なので、「知財戦略だけに限定されない」「知財情報だけに限定されない」というイメージで覚えてください。

 

【問29】

正答は(ア)。

「普通名称」(商標法3条1項1号)には、その商品の「略称」「俗称」が含まれます。

標準文字のローマ字2字からなる商標には、自他商品等識別力が認められません(商標法3条1項5号)。

「商標法3条1項3号から商標法3条1項5号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、商標法3条1項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる」(商標法3条2項)。

「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。¶三 その商品の産地…品質…を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(商標法3条1項3号)。

 

【問30】

正答は(イ)。

問30は簡単なので解説省略します。

それにしても枝(エ)はクイズの珍解答みたいで面白いですね。「1人」じゃ合議体を形成できないし(寂し過ぎます…)、「2人」にしたら「合議体の合議は、過半数により決する」という特許法136条2項が遵守不可能に…(笑)。

 

【問31】

正答は(エ)。

「特許無効審判は、『利害関係人』…に限り請求することができる」(特許法123条2項)。発展的内容を学習したい方は省略部分を法令集で読んでおいてください(知財検定2級でも弁理士試験でも頻出テーマです)。

要注意の枝は(ウ)。

「特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、初めから存在しなかったものとみなす。ただし、特許が特許法123条1項7号に該当する場合において、その特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、その特許が同号に該当するに至った時から存在しなかったものとみなす」(特許法125条ただし書)。

特許法123条1項7号というのは、いわゆる「後発的無効理由」のことです。弁理士試験では商標法上の「後発的無効理由」が頻出テーマなので、受験する方は特許法と併せて学習しておくとよいと思います。

 

【問32】

正答は(ウ)。

「法人その他使用者…の『発意』に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物…で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その『作成』の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その『法人等』とする」(著作権法15条1項)。

法人著作(職務著作)は知財検定でも弁理士試験でも頻出テーマですので確実に押さえておいてください。著作権法15条1項の要件を全て記憶していないと解けないような問題もしばしば出題されます。

 

【問33】

正答は(ウ)。

特許法107条1項の規定による第一年から『第三年』までの各年分の特許料の納付又はその納付の免除若しくは猶予があったときは、特許権の設定の登録をする」(特許法66条2項)。

要注意の枝は(ア)。

特許庁長官は、特許法17条3項の規定により手続の補正をすべきことを命じた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないとき、又は『特許権の設定の登録を受ける者が特許法108条1項に規定する期間内に特許料を納付しないとき』は、その手続を『却下』することができる」(特許法18条1項)。

 

【問34】

正答は(イ)。

「願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもってその補正を却下しなければならない」(商標法16条の2第1項)。

要旨変更補正の問題は実技試験でもよく出題されるので、過去問等できっちり押さえておいてください。

 

【問35】

正答は(エ)。

著作者人格権侵害行為の開始時点が著作者の生存中であっても、著作者の死後に遺族が権利行使できる場合があります(著作権法116条、加戸守行『著作権法逐条講義』(著作権情報センター、6訂新版、2013)795頁参照)。

枝(エ)は知財検定1級(コンテンツ専門業務)レベルの問題なので、消去法で乗り切りたいところですね。

 

【問36】

正答は(エ)。

「同一の発明について同日に二以上の特許出願があったときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない」(特許法39条2項)。

 

【問37】

正答は(イ)。

「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、『特許出願の際』現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する」(特許法79条)。

なお、特許法79条所定の「先使用による通常実施権」(先使用権)は、「無償」の通常実施権です。

 

【問38】

正答は(エ)。

先後願の判断がなされるのは、「特許vs.特許」「特許vs.実用新案」「実用新案vs.実用新案」「意匠vs.意匠」「商標vs.商標」の場合だけです。このように「特許」と「意匠」はクロスサーチされませんので、両者がともに設定登録された場合は、利用・抵触関係(特許法72条、意匠法26条)の問題として処理します。

要注意の枝は(イ)。

自己と他人の意匠権の「類似範囲」同士が抵触した場合は、先願者が勝ちます。この場合、後願者は抵触する範囲について「自己の登録意匠に類似する意匠」を業として実施することができなくなります。ただし、この場合であっても、「自己の登録意匠」の実施は制限されません。

なお、枝(ア)については、意匠法にも「先使用権」があることを確認しておいてください。

 

【問39】

正答は(エ)。

「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する」(著作権法28条)。

例えば、漫画家(「原著作物の著作者」)は、自己の漫画作品の「二次的著作物」である同人誌のカットがtwitterにアップされた場合は、公衆送信権(「著作権法21条~著作権法28条に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利」)に基づいて、差止請求権(著作権法112条1項)を行使することができます。

要注意の枝は(イ)。

原著作者(原著作物の著作者)の許諾は、二次的著作物の成立要件ではありません。

なお、枝(イ)(ウ)(エ)の「原著作物に係る著作権者」というのは、「原著作者」(原著作物の著作者)から著作権の譲渡を受けた者(「原著作物の著作権者」)の存在を念頭に置いた表現です。問39では結論を左右するファクターではありませんが、著作権譲渡が絡む事例問題を解く際には、両者の違いに留意してください。

 

【問40】

正答は(ウ)。

「…『登録商標』(…『登録商標と社会通念上同一と認められる商標』を含む。商標法50条において同じ。)…」(商標法38条5項)。

「継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての『登録商標』の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる」(商標法50条1項)。

「不使用取消審判」は、弁理士試験では頻出、知財検定2級では超頻出論点です。確実に押さえておいてください。

 

* * *

 

学科については以上です。

当サイトで知財検定2級の解説記事を書き始めた第37回試験以降、学科の難易度が以前よりやや高くなった印象です。

学科はとにかく出題数が多い「特許法」への対策が必須です。実技は「特許法」「著作権法」の二本柱に加え、「商標法」の大問対策が合否を分けるといわれています(恩師の分析の受け売りです…(笑)。

 

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■実技

 

実技の解説を始めます。

問1から問18までは、「結論」と「理由付け」がセットになっている出題形式なので、2問ずつ片付けていきましょう。

※「理由付け」を読むだけで容易に理解できる問題は解説省略します。

 

【問1】【問2】

正答は「×」。

理由は「イ」。

特許法39条(先願主義)違反に該当するためには、「発明Aと同じ内容の発明」が特許出願Cの「特許請求の範囲」に記載されている必要があります。一方、特許法29条1項(新規性)違反に該当するためには、出願公開された特許出願Cの「明細書」「特許請求の範囲」「図面」のいずれかに「発明Aと同じ内容の発明」が記載されていることが必要です。

 

【問3】【問4】

正答は「○」。

理由は「ア」。

特許法39条(先願主義)は外国出願には適用されません(パリ優先権制度の存在からも明らかなように、日本とアメリカで同一発明が特許を受けることは全然問題なし)。一方、新規性(特許法29条1項)判断の地理的範囲は「世界」なので、出願公開された米国特許出願Dの明細書、特許請求の範囲又は図面に「発明Aと同じ内容の発明」が記載されていれば新規性違反に該当する可能性があります。しかし本問では、特許出願Bの出願日は米国特許出願Dが出願公開される「前」なので、新規性違反にも該当しません。

 

【問5】【問6】

正答は「×」。

理由は「イ」。

発明A(構成要素a × 構成要素b)は、出願前に雑誌記事Eにおいて開示された構成要素aと公開特許公報Fにおいて開示された構成要素bの単なる「寄せ集め」に過ぎないので、特許法29条2項(進歩性)違反を理由に拒絶されます。

 

【問7】【問8】

正答は「×」。

理由は「イ」。

「商標」の類否判断については、商標の「外観」「称呼」「観念」のいずれか1つでも類似すれば、「類似する商標」に該当し得ます。本問では、少なくとも「称呼」「観念」は同一ですので、「類似する商標」に該当します。

 

【問9】【問10】

正答は「×」。

理由は「エ」。

特許法・実用新案法・意匠法と同じく商標法にも「先使用権」(正式な用語としては「先使用による商標の使用をする権利」)があります。特許法等と異なり、「先使用による商標の使用をする権利」が認められるためには、「他人の商標登録出願前に周知性を獲得していること」が必要です(商標法32条1項)。

 

【問11】【問12】

正答は「×」。

理由は「ア」。

「不使用取消」は、登録商標が「継続して3年以上」使用されていない場合に認められます(商標法50条1項)。本問においては、商標権Mの設定登録が「2021年2月」、甲の発言時点が「2021年7月」なので、設定登録により商標権が発生した後に登録商標が一度も使用されなかったとしても、不使用期間が「3年以上」になることはあり得ません。

 

【問13】【問14】

正答は「○」。

理由は「イ」。

「わかりやすく工夫して記載」したことにより創作性が認められれば、「地図の著作物」(著作権法10条1項6号)に該当し得ます。

 

【問15】【問16】

正答は「×」。

理由は「ア」。

「次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。¶三 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの」(著作権法13条3号)。

 

【問17】【問18】

正答は「○」。

理由は「ウ」。

「共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない」(著作権法65条2項)。

座談会は「共同著作物」の典型例です。

 

【問19】

正答は(ア)。

要注意の枝は(ウ)。

「商標Bが付された、化粧品を包装するための包装パッケージ」は、「侵害の行為を組成した物」(商標法36条2項)に該当するので、廃棄を請求することができます。

 

【問20】

正答は(ウ)。

「育成者権の存続期間は、品種登録の日から25年(種苗法4条2項に規定する品種〔『永年性植物』〕にあっては、30年)とする」(種苗法19条2項)。

 

【問21】

正答は(イ)。

本問は条文よりむしろ実務上の「常識」を問う問題なので、解説は省略します。

 

【問22】

正答は(エ)。

ライセンス戦略のメリットとデメリットに関する問題です。他社にライセンスすることにより、自社設備等への投資額を抑制しつつ、ライセンシーとともに市場の拡大を図るという戦略があり得ます。

 

【問23】

正答は(エ)。

例えば、X社を退職した技術者による製造技術Bの開示が「営業秘密不正開示行為」(不正競争防止法2条1項8号)に該当することを知った上で、Y社が当該営業秘密を買い取った場合は、Y社に対する損害賠償請求が可能です。

 

【問24】

正答は(エ)。

特許法33条…(特許を受ける権利)の規定は、意匠登録を受ける権利に準用する」(意匠法15条2項)。

「特許を受ける権利は、移転することができる」(特許法33条1項)。

 

【問25】

正答は(ア)。

「発明者」となれるのは「自然人」だけです。詳しくは、学科「問10」を参照してください。

要注意の枝は(イ)。本枝の行為は、「公用」(特許法29条1項2号)に該当する可能性があります。

枝(ウ)は過去にも類題が出ていますので、incorrectな部分を書き換えた上で結論を記憶しておいてください。

 

【問26】

正答は(イ)。

関税法上の「認定手続」の結果、輸入しようとしている物品が商標権侵害物品であると認定された場合、当該物品の侵害部分を切除することにより、輸入が認められる場合があります。

 

【問27】

正答は(イ)。

特許権及び意匠権は譲渡可能なので、販売者と出願人が同一主体であるとは限りません。

要注意の枝は(ウ)。

特許・意匠登録に係る製品に記載されている特許番号や意匠登録番号は、当該製品(「完成品」)全体に関するものである場合もあれば、当該製品に組み込まれている「部品」に関するものである場合もあります。本枝のように断定することはできません。

 

【問28】

正答は(イ)。いわゆる「自力救済の禁止」ですね。

要注意の枝は(ア)。

例えば、X・Y両社の間でX社の本店所在地の地方裁判所を管轄裁判所とする旨の「管轄の合意」(民事訴訟法11条1項)がなされていた場合等がこれに当たります。

枝(ウ)は民法を学んだ方にはおなじみの問題かと思いますが、この機会に確認しておいてください。

 

【問29】

正答は(イ)。

「美術の著作物でその原作品が著作権法45条2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。…」(著作権法46条)。

なお、枝(ア)は「パブリシティ権」、枝(ウ)(エ)は「公衆送信権」の問題になり得ます。

 

【問30】

正答は(ウ)。

問30は簡単なので解説省略します。

…って、学科の問30でも同じことを書きましたね。出題者も私もそろそろ疲れてきたようです(笑)。

 

【問31】

正答は(イ)。

置換容易性の判断時点は、侵害時(侵害品の製造時)です。

 

【問32】

正答は(ウ)。

要注意の枝は(エ)。

「製品開発における失敗の情報」等のいわゆる「ネガティブインフォメーション」も、事業活動に有用な情報であれば、「営業秘密」として保護される場合があります。

 

【問33】

正答は(イ)。

業務提携の相手方を選ぶ際には、「市場において価値の高い技術について、技術補完度が高い相手とアライアンスを組むべき」です。実技試験でIPランドスケープのグラフ問題が出たら、まずグラフを見て提携相手を決定し、その相手を支持すべき理由を選択肢の中から選び出しましょう。

 

【問34】

正答は(イ)。

(15+12)*4000+138000=246000(円)

 

【問35】【問36】【問37】

正答は「すべての出願」「国際調査」「国際調査見解書」。

 

【問38】【問39】【問40】

正答は「著作者人格権」「原著作物の著作者」「があります」。

本問については、映画著作物関連の問題を解説した第38回実技試験「問13~問18」の記事をご参照ください。

https://derballistrund.hatenablog.com/entry/2021/04/10/221118

 

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知的財産管理技能検定(知財検定)2級(管理業務)第39回学科・実技試験の解答及び解説は、以上になります。

この記事が、皆さんの知財学習の一助となれば幸いです。

それでは今日は此の辺で。素敵な休日をお過ごしください。